こんにちは、なお整骨院の院長 小野です。
当院には、産後の体調ケアのために定期的に通院される患者さまが多くいらっしゃいます。当院以外でも「産後の骨盤矯正」や「産後ヨガ」などで積極的に産後ケアを行う方が多いようです。
しかし、『帝王切開』特有の体の悩みはこれらで解消できるでしょうか?
最近では出産の4分の1が帝王切開と言われ、分娩方法として特別なものではなくなりました。一方で切開した傷の痛みや不快感など、帝王切開特有の不調に着目した産後ケアはあまり知られていないのが実情です。多くのお母さん方が悩まれているのにも関わらずです。
また、ご本人も帝王切開が原因と気付いていらっしゃらない体調不良(頭痛など)も存在します。(この点については、次回ブログで解説いたします)
このブログでは、帝王切開後の体の中で何が起きているのか、なぜ傷跡が痛むのか、そしてオステオパシーでどうのような治療ができるのかを解説し、続けて次回ブログでは、帝王切開が原因で起きた頭痛、腰・ひざ・股関節の痛みについて解説いたします。
帝王切開とは
赤ちゃんが産道を通り、膣(ちつ)から生まれることを「経腟分娩(けいちつぶんべん)」といいます。それに対し、お母さんか赤ちゃんに何らかの問題が生じて経腟分娩が難しいと判断される場合に、麻酔をして、手術でお腹と子宮を切開して、赤ちゃんを出産する方法を「帝王切開」といいます。
帝王切開になるケースは大きく分けて3つあります。
1つは「妊娠中から経腟分娩が難しいと判断され、手術日を決めて手術が行われるケース」、2つ目は「分娩前や分娩中に赤ちゃんやママにトラブルが起こり、緊急に手術が行われるケース」、3つ目は「経腟分娩を試みたものの、お産が長引くなどの理由で結果的に手術に切り替えるケース」です。
帝王切開になる原因でもっとも多いのは逆子。また、赤ちゃんに何らかのトラブルが起こった場合(胎児機能不全)や、陣痛が弱くお産が進まない場合(微弱陣痛)も上位に挙がっています。
帝王切開の比率は先進国では年々増加しています。要因はさまざまですが、一番は赤ちゃんの安全を優先するためです。経腟分娩では赤ちゃんは、狭い産道のなかを陣痛のストレスに耐えながら長い時間をかけて出てきます。もちろん多くの赤ちゃんは元気に生まれてくるのですが、経腟分娩にこだわり苦しい時間を長引かせるより、早めに帝王切開を選択することが赤ちゃんにとって安全、安心というケースもあります。
帝王切開後の体の中では何が起きている?
帝王切開で出産した後、最後に切開部分を縫合し手術終了となりますが、切開でできた傷の修復は縫合したときから始まります。傷が治癒していくとき、体の中では何が起きているのでしょうか?「皮膚の傷」「子宮」「軟産道と骨盤底筋群(筋肉や靭帯)」に分けて見ていきましょう。
皮膚の傷
・炎症期(手術直後)
帝王切開後の傷の痛みのピークは、術後1~2日です。痛みの度合いには個人差がありますが、一般的に麻酔が切れることで傷口に強い痛みを感じる人が多くいます。
さらに開腹した傷口の痛みだけでなく、子宮収縮にも痛みを感じることがあるため、双方が重なり強い痛みを感じる人もいるでしょう。この状態が2~4日続きます。
この傷の痛みの原因は、体内の「白血球」。白血球が傷を治しながらも、一方で痛みを起こす物質(炎症メディエーター)も放出しているからなんです。つまり、活発に傷の修復が行われるこの時期は痛みを感じやすい時期ともいえるでしょう。
・増殖期
炎症期が始まってしばらくたつと、傷は増殖期=新しい細胞が増殖して傷になった部分を埋めていく時期に入ります。炎症期ほど強い痛みはありませんが、軽い痛みやかゆみ、皮膚の赤みなどが見られることが多々あります。 この時期は約1~2週間程続き、次の時期に移行します。
・成熟期(安定期)
細胞の増殖が落ち着き、傷の箇所の血管も修復されて、痛みやかゆみも徐々になくなっていく時期です。傷跡も次第に目立たなくなっていきます。
ただし傷口になんらかの異常が起こった場合は赤く盛り上がり、目立つように残ってしまうこともあります。そうならないためには、炎症期~増殖期~成熟期までがスムーズに進むよう、傷口の自然治癒をできるだけ妨げないことが大切です。
そして、産後1年ほどかけて回復し、傷口は自然と目立たなくなります。
子宮
子宮の大きさは元々は卵1つくらいの大きさ。妊娠によりこれがおよそ10か月かけて大きくなり、出産直後もおへその高さくらいまであります。その後約4週間で妊娠前と同じ状態に戻っていきます(子宮復古)。
産後、子宮は急速に妊娠前の大きさに戻ろうとして、収縮を繰り返します。
この時おなかがキューッと痛くなるのが「後陣痛(こうじんつう)」です。
後陣痛があるのは子宮の出血を防止し、後産の遺残排出を促すため。月経痛よりもやや強い痛みですが、徐々に治まります。後陣痛は子宮の回復が順調なしるしと考えましょう。
帝王切開の場合、子宮復古が経腟分娩よりもゆっくり進むといわれます。
これは、子宮自体に傷があること、帝王切開直後の1~2日程度はベッド上で安静にする必要があるので、体外に排出されるべき悪露が子宮内にたまりがちになることが理由として考えられます。
また、赤ちゃんへ授乳することで子宮を収縮するホルモンが分泌されるのですが、安静時には授乳することが難しい場合もあります。
これらの理由により、帝王切開の場合 後陣痛が長引くこともあるようです。
軟産道と骨盤底筋群
軟産道(なんさんどう)という名前を聞いたことはありますか?
軟産道とは経腟分娩のときの赤ちゃんの通り道のことで、子宮下部や子宮頚管、膣、外陰部までをいいます。その周りには、骨盤内の大切な臓器を保護する骨盤底筋群をはじめ、たくさんの筋や靭帯などのやわらかい組織が取り巻いています。
これらの組織は、経腟分娩で赤ちゃんが軟産道を通過するときに最大の圧迫を受けることになります。強い外圧により緩んでしまった骨盤底筋群などの筋組織はある程度までは回復しますが、全くケアをせずに放っておくと産後の尿もれなどの原因となることがあります。そのため多くの病院では骨盤底筋群の速やかな回復のため、産後の産褥体操を勧めています。
この骨盤底筋群などの筋組織のゆるみ、実は帝王切開であっても無関係ではないんです。
なぜなら、骨盤底筋群や靭帯の一部は、長い妊娠期間に赤ちゃんの成長とともに重みを増す子宮をずっと支えているから。
つまり、赤ちゃんが軟産道を通らなくてもお母さんはみんな長期間にわたって、骨盤底筋群などの筋組織にある程度のダメージを受けていることになります。ましてや、陣痛があり、お産がある程度進んだ状況で緊急帝王切開となった場合は、切開による傷、そして軟産道や骨盤底筋群などへの強い圧迫と両方のダメージを受けることになります。
帝王切開の場合も骨盤底筋群などの筋組織を回復するため産褥体操などの産後ケアは必要です。適切なケア方法については術後の体調を考慮し、病院に相談してみましょう。
帝王切開後の体のお悩み-傷跡の痛み・かゆみ
帝王切開をされたお母さんには、帝王切開特有の産後のお悩みがあります。
特に多いのは傷跡の痛み。産後しばらく経ったのに、傷跡が痛む・かゆい・引きつるなどのお悩みを訴えるお母さん方が当院にもいらっしゃいます。治癒したはずの傷跡が痛むのはなぜでしょうか?
なぜ傷跡が痛む?
帝王切開ではお腹と子宮を切開します。「切開」と簡単に言っても、実際には表面の皮膚を切り、その下の筋肉、腹膜、そして子宮を切っています(本当はもっと多いです・・・)。そして赤ちゃんを取り出した後は、この何層にもなる筋層や子宮、皮膚を縫ったり、ホッチキスで止めたりしています。
例えば、何枚にも重なった布を切って、その後縫い合わせようと思っても、どんな高い技術があったとしても、元のとおりに戻すことは難しいですよね。
もちろん人体には皮膚を再生させる自然治癒力がありますが、元々つながっていた場所と言えども完全に復元するようにくっつけることは不可能で、多少のズレがある状態で固定されてしまいます。
こうして多少のズレを残したまま皮膚や筋膜はくっついていくので、術後は元のような柔軟性や伸縮性が失われ、ひきつった感じがするのです。
ひきつったり引っ張られた皮膚や筋膜の表面は薄くなり、防御力が弱まっています。そのため、ちょっとした刺激にも敏感になってしまいます。これが傷跡が痛む原因です。
どんな時に痛む?
帝王切開で切開した場所、切開方法(縦に切開・横に切開など)、傷の大きさ、そして縫合の仕方は人それぞれ、また治癒の経過も体質によることがあるので、傷跡が痛む程度・状況も人それぞれです。
よくある痛むタイミングは、傷跡に物があたったとき。
気を付けていても、不意に赤ちゃんの手や足があたってしまい痛くてツライ、とお悩みのお母さんがよくいらっしゃいます。また傷跡にあたるような下着、ジッパーがあるズボンなどが履けない・・とお悩みのお母さんもいらっしゃいました。
傷跡に物があたって痛いのは、手術によって切れた末梢神経の伝達がうまく働いていないから。帝王切開では皮膚や膜だけではなく、神経の一つである末梢神経も切っています。その後、傷跡の回復とともに、末梢神経は新たに再生しますが、この末梢神経のくっつきが悪いと感覚の伝達がうまくいかず、ピリピリとした痛みや不快感が生じます。
重いものを持ったときに傷跡が痛むというお母さんも多いようです。なぜでしょうか?
人は重いものを持つときにお腹に力をいれます。この時、腹部にある腹膜に圧がかかります(腹圧が高くなる)。普段の生活では、トイレでの排泄など、主に「息む」ときに腹圧が高くなるのを感じることができます。
この腹膜を、帝王切開では切って縫っているため、元のようには伸び縮みしません。
腹圧がかかると、傷跡にテンション(張力)がかかり腹膜がバランスよく膨らまず、傷跡が痛む原因になります。
また天気が悪いときに傷跡が痛むというお母さんも。
天気が悪くなり気圧が下がると、重いものを持った時と同じように腹圧があがり腹膜が膨張します。これが痛みの原因となります。
生理前や生理中に傷跡が痛むというお母さんもいらっしゃいます。
これは生理時の子宮の収縮が原因。帝王切開後は子宮に傷があるため、子宮が収縮するときに痛みを感じやすくなります。
子宮の切開部も、お腹の切開痕と同じように多少のズレがあってくっついていくので、やはり元のような柔軟性は失われています。柔軟性のない切開部には負担がかかりやすいため痛みを感じるのです。
オステオパシーで帝王切開後の傷跡を正しくケア
帝王切開でできた傷跡の痛みやかゆみ。産後1年程で終わると言われることも多いですが、1年を超えて長年悩まれているお母さんもいらっしゃいます。これらを解消する方法はないのでしょうか?
当院のオステオパシー施術では、術後の傷周りの柔軟性に着目した治療を行っています。こここまで読まれた方は「傷の痛みの解消には柔軟性がカギとなる」ことにすでに気づかれているかもしれませんね。
人間にとって「体の柔軟性」というのは、健康を維持するのにもとっても大切な要素。
筋肉・靭帯・皮膚・膜といった体を構成する組織に柔軟性があるからこそ、体を多少押したり引っ張ったりしても、痛みを感じにくく怪我もしにくくなっているのです。もし、これらの組織がガチガチに硬い組織だったら??人は立つときでさえ、いえ、座るときでさえ、痛みを感じるでしょう。歩こうものなら怪我をしてしまうはずです。
このように元々柔軟性を十分に持った皮膚や筋、靭帯ですが、帝王切開によって一度切開すると傷が治癒した後もとても硬い状態になってしまいます。
体を動かしたりすると、硬くなってしまった部位この硬さが動くことになり、痛みやつっぱり感を引き起こしているのです。
オステオパシーではこの硬くなった表面の皮膚や、その下にある何層にも及ぶ膜(筋膜など)を柔らかくする施術を行っていきます。
柔らかく柔軟性を持たせることで、多少の動きや衝撃でも痛みやつっぱり感は出なくなります。
ズレてくっついたものを元のように完全に一致させることはできません。
しかし、ズレていてもそこに膜同士の柔軟性や可動性があれば、体は自然とバランスを取り戻し治癒力を発揮するというのがオステオパシーの考え方です。
傷跡を柔らかくする施術と言っても、傷を押したり揉んだり、強い圧をかけたりと痛みが出るような施術は行いませんので、安心してください。
オステオパシーは生後1週間の赤ちゃんからご高齢の方、妊婦さんも安心して受けられる痛みのない優しい施術が特徴です。
このブログでは、帝王切開後の身体の不調の中でも特に多い「傷跡の痛み・かゆみ」について、その詳しい症状と治療法を説明いたしました。
この「帝王切開後の傷跡の痛み・かゆみ」は、お母さんご本人も「帝王切開が原因」と自覚されている症状の1つです。
しかし、この傷跡の痛み・かゆみ以外にも実は「帝王切開が原因」で体が不調になることがあります。この場合、お母さんご本人も「帝王切開が原因」とは自覚できていないことが多いのです。
次のブログでは、ご本人も自覚していない「帝王切開が原因の体の不調」について解説いたします。ご自身の状態と当てはまることがあるかもしれません。ぜひご確認ください。
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