こんにちは、なお整骨院 田端です。
私のブログでは、小野院長のブログとはちょっと違った、日々の治療や勉強を通して学んだことや感じたこと、考えたことなど少々マニアックな内容を記事にしていきます。
皆さんは『医学5大流派(多少呼び方に違いがあります)』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
西洋医学には5大流派という言葉の通り、5つの考え方に基づく治療法が存在します。
医学に流派なんてあるの?と思われた方、実は当院の『オステオパシー』も5大流派のひとつなんです。
その5大流派というのは以下の通り
(1)アロパシー(薬物療法)
(2)ナチュロパシー(自然療法)
(3)ホメオパシー(同種療法)
(4)サイコオパシー(心理療法)
(5)オステオパシー(整骨療法)
今回は割愛しますが、東洋医学でも、個別に名称があるわけではないものの、治療法によってこの5つの考え方にあてはめることができます。
かつては、この5大流派が切磋琢磨して技術や見解を深めていました。
ところが、現代医学=アロパシーといっても過言ではないほど現代医学では(1)アロパシーが主流で、それ以外の(2)~(5)は代替療法と呼ばれるようになりました。
そしてなんと、この5大流派のアンバランスが人々の治癒の妨げとなっていることがあるのです。
今回はこの『医学5大流派』と、『そこに存在する問題』、さらにそれを踏まえた『私の理想とする治療・治療家像』について書いていきます。
(オステオパシーは西洋医学でも東洋医学でもないとの考えがありますが、このときの「西洋医学」とは「現代医学≒アロパシー」のことを指すと解釈しています。)
医学5大流派
(1)アロパシー(薬物療法)
〈薬で病気の症状を抑え込む対症療法〉
アロパシーは『逆症療法』とも呼ばれ、高熱があれば解熱剤を、どこか痛いところがあれば痛み止めをというように、「体がおこしている症状と反対の症状をおこすものを与えることで症状を取り去る」という考えです。先にも述べたように現代医学における主流で、「外科手術」もこの考えに基づくといっていいでしょう。
(2)ナチュロパシー(自然療法)
〈体に共鳴を起こす自然素材を使い自然治癒力を高める〉
ナチュロパシーでは、病気の原因はわるいものが体に溜まることによるものと考えます。そのわるいものをがんばって出そうとするときに、熱・腫れ・痛みなどの症状が出るので、体に溜まった余分なものを抜き、自然のチカラを借りて、自分の治癒力で治っていく事を目指す方法です。
ナチュロパシーには6つの原理原則というものが存在し、それに基づいて、食事療法、栄養学、カウンセリング、ホメオパシー、ハーブ療法、運動指導、マッサージ、リラクゼーション等自然の代替療法を駆使し治癒に導きます。
(3)ホメオパシー(同種療法)
〈レメディーで自然治癒力を刺激して体内の不要なものを全て排出させる〉
ヒポクラテス(古代ギリシャの医師・哲学者。「医学の父」と呼ばれる)の唱えた「症状をひきおこすものは、その症状を取り去るものにもなり得る」という『同種の法則』を元に、今から200年前にドイツの医師であるサミュエル・ハーネマン が確立した療法です。症状を起こすものを非常に薄め活性化(希釈振盪)した「レメディー」という特殊な砂糖玉を使うことが最大の特徴です。
症状は体からにしろ、心からにしろ、必要があって表出しているのであり、レメディーによって症状を出し切ることが治癒につながるという考え方を持ちます。
(4)サイコオパシー(心理療法)
〈心と体は不可分 心が治れば体も治る〉
心身相関、心身一如の概念から、心の問題を緩和することで体の自然治癒力を上げ、健康に導く療法です。
精神分析療法や催眠療法、音楽、色彩、対話療法、笑い療法、瞑想療法などが該当します。
東洋では気功が代表的。さらにヨガや、自律神経訓練法などもこのサイコオパシーの一種です。
(5)オステオパシー(整骨療法)
〈体の歪みを正し、体が本来持っている機能性を取り戻す〉
オステオパシーは19世紀にアメリカの医師A.T.スティルによって発表された徒手医学です。様々な物理的、精神的ストレスや刺激、変化によって起こる、筋・筋膜、骨格、内臓、神経系、血管・リンパ系等の障害、歪みを解放する治療を施すことを目的とします。
原因となっている障害、歪みが取り除かれれば人間本来が持つ自然治癒力が症状を治してくれるという考えです。
オステオパシーは手で筋肉や関節、内臓や神経などの人体の全ての膜組織に施術(手技療法)を行いますが、テクニックの名称ではなく、スティル医師が考えたオステオパシー哲学・医科学・技術の総合的な物を示します。
現代医学における5大流派
現代医学はアロパシー 一強
かつて、医学の世界では東西を問わず治癒の仕組みに関する結論は一致していました。それは「自身の自然治癒力でしか体は治癒しない」ということです。アロパシー(薬物療法)でも、「症状の苦しみ自体が個体の自然治癒力を下げてしまうぐらいなら、症状を一旦沈めて患者さんの体力と治癒力が働くまで様子を観察する」ということが本来の考えだったはずです。
ところが、アロパシーが強力な権力を持つにつれ、「自然治癒力」という言葉を毛嫌いし、アロパシー以外の医学は「ニセ医学」「エセ科学」とまでいう人まで現れる始末。
特に、法整備が進み健康保険制度が整っている日本においては、健康保険適応の医学(アロパシー)こそが真の医療であると考える人が少なくないのが現状です。
アロパシーとホリスティックな医学
現代医学において主流であるアロパシーでは、腰が痛ければ腰を診るし、肩が痛ければ肩を診るし、心音に異常があれば心臓を診ます。多くの場合で体を局所的に診ることしかしません。今や自然治癒力という言葉や考えは受け入れられ難く、治療者側も患者さん側も「病気は医者や薬が治すもの」と思っている方が大半でしょう。
これに対してアロパシーを除く(2)~(5)は、人間をホリスティック(全体的、統合的)に診るという点で共通しています。症状を診るのではなく、人を診るのです。さらにいうと、人とは「Body(身体)」「Mind(精神)」「Spirit(魂)」の三位一体の存在であり、これらすべての調和が完全なる治癒を引き起こすと考えています。
アロパシーだけが飛び抜けたことで生じた問題
アロパシーが力を持ちすぎたことで、アロパシーだけが世に認められ、他の流派は偽物のレッテルを張られるようになり、治療の選択肢として選びづらい状況になってしまいました。日本では、アロパシー以外の流派は言葉や存在すら知らない人がほとんどでしょう。そもそもアロパシーという言葉や、医学に流派が存在することも知られていないのではないでしょうか。
各流派は偽物の汚名を返上しようとして自分たちの思想を誇示し、他の流派を否定し、「自分たちのやり方でしか治癒はありえない」と患者さんの主体性を奪うような治療が行われるようになり、その結果「自身の自然治癒力でしか体は治癒しない」という考えはいつの間にか治療家の頭から忘れ去られてしまいました。治療を押し付けられるようになった患者さんの頭から「自然治癒力」の考えが失われていくのは当然です。
治療者は自分の所へやってきた患者さんに対し「自分の治療で治してみせよう」とするようになり、オステオパシーに出会う前の私もそうであったように、患者さんは自分の身体の声に耳を傾けることをせず、本格的に調子が悪くなったら診察や治療を受けて「治してもらおう」とするようになってしまいました。
なお整骨院のオステオパシー治療
他の流派を否定しない
当院では、オステオパシ-の考えをもとに施術を提供していますが、オステオパシーこそが医学の神髄などとは微塵も思っていません。オステオパシーの考えに賛同・共感できる部分が多く、オステオパシーにしかできないことがあると思っているのは事実ですが、全てがオステオパシーで何とかなるとは思っていません。
来院してくださった患者さんに対して、化学物質や添加物を避けて食事や栄養はより自然に近いものを摂取することを勧めますし、レメディーを作ってお渡しすることはできませんが興味がある方にはレメディーとはどんなものか簡単に説明することはします。お話を聞き、またこちらからお話をすることで次のステップへ進んで行く患者さんがいらっしゃるのを実際にみてきました。
日本ではいわゆる代替療法家といわれる我々が忌み嫌う事の多いアロパシー薬も必要な場面が必ず存在します。
2018年の平昌五輪での羽生結弦選手。大会3か月前、練習中に負傷してしまい五輪までの全試合をキャンセルして本番に挑み、金メダルを獲得しました。大会後のインタビューでは「最終的に痛み止めと一緒だった」と話しています。男子フィギュアスケートでは66年ぶりの五輪2大会連続金メダルという偉業は、「痛み止め」が無ければ達成されなかったかもしれません。
どの流派も全く正しくも、全く誤ってもいないのです。
私の理想とする治療・治療家像
オステオパシーで足りない部分は他で補う必要があります。そのために他の医学流派や東洋医学の技術・知識を使うこともあります。それぞれに向き・不向き、得手・不得手があります。
治療家自身の思想・流派(当院の場合はオステオパシー)にどっしりと根を張りつつ、枝葉を伸ばすように他の流派や他の分野のそれぞれの長所をうまく組み合わせた施術や提案、アドバイスができるような幅広い見識を持つことが治療家の理想の姿ではないかと考えています。人の体に対してそうであるように、医学に対してもホリスティックな知見を持つことが医療者として求められるのではないでしょうか。
一緒に頑張りましょう
私たち治療家は、「自身の自然治癒力でしか体は治癒しない」ということを常に頭に置き、それを患者さんに伝え知ってもらわなければなりません。
「治療家が治す」のでも、「治療家に治してもらう」のでもないのです。治癒の主体は患者さんです。治療は治癒のきっかけを与える行為に過ぎず、私たちにできるのは患者さんが治るお手伝いだけなのです。
「治る」とは「体が現状とは変わる」ということ。その途中、もしかすると辛いことや苦しいことがあるかもしれません。ですが、治ったその先には明るく楽しい未来が待っているはずです。その道程のお供をさせてください。全力でお手伝いいたします。
一緒に頑張りましょう。
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