10年以上前の足首の捻挫が原因 ー傾いた骨盤
忘れていた10年以上前の足首の捻挫(Bさん 40代前半)
40代前半のBさんが当院に来院されたときは、すでにクリニックで体外受精を数回行った後のことでした。クリニックの検査では夫婦ともに不妊の原因となる症状は見つからなかったものの、年齢のこともあり体外受精にステップアップ。それでもなかなか結果に繋がらないことに不安に覚え、着床の確率を上げることはできないかと当院にいらっしゃいました。
当院にてBさんの全身を検査をしてみると、右足首の関節がずれていることが分かりました。
Bさんに過去に右足をケガしたことがないかお聞きしてみると、10年以上前に右足首を捻挫したことがあるそうです。本人も言われて初めて思い出したということでした。
骨折やアキレス腱断裂の場合、治療期間が長いせいもありなかなか忘れることはありませんが、捻挫のように軽度のものは1週間~2週間程で治るため、忘れていても不思議じゃありません。
ただ本人の記憶には残っていないとしても、身体にはその影響が残っています。
多くの場合、足首の捻挫は、足首を内側に捻ることで前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)という靭帯が過度に伸ばされ傷が入ることで起こります。
切れている靭帯がくっつけば、痛みはなくなるし歩くことも出来ます。通常この状態になったとき「治った」と認識されます。
しかし、捻挫というのは靭帯が切れるほどの大きな力がかかっています。
実は、足首の捻挫は前距腓靭帯を損傷するだけでなく、この靭帯がつながる腓骨(ひこつ)という骨の位置も変えてしまいます。 膝から足首につながるこの腓骨の位置が本来あるべき場所より下がってしまうのです。
靭帯の損傷は時間がたてば治りますが、きちんと治療をしていないと下がった腓骨はずれたまま…。
ずれたままの骨の影響はどんなところに出てくるのでしょうか?
それは私たちの体の中心にある最も大切な・・・「骨盤(こつばん)」です。
このずれたままの腓骨は、腓骨に繋がる大腿骨をずらし、その上の股関節、そして身体の中心である骨盤までをも傾かせているのです。
骨盤の歪みはダメというのは聞かれたことがあるのではないでしょうか?
妊娠するためだけではなく、誰にとっても骨盤のズレは多くの悪影響を与えます。
「では足首以外の捻挫はどうなの?」と思われますよね?
足首の捻挫に限らず、膝や股関節はもちろん、手首の捻挫も、体のほとんどの部位の捻挫が骨盤の傾きに繋がっています。
体はすべて繋がっています。骨盤から遠い場所にあって関係なさそうな骨でも、一つの身体の中にある以上、影響は避けられないのです。
なぜ骨盤の傾きが妊娠力に影響を及ぼすのか
子宮は骨盤のなかにぶら下がるように繋がっています。
妊娠力をあげるためには、子宮が正しく力を発揮することがとても大切です。
しかし、骨盤が傾いたままでいると、骨盤にくっついている子宮も同じように傾いたままになってしまっているのです。
子宮が傾くということは、子宮の形が変わってしまうということ。
つまり、子宮・卵巣・卵管の位置関係も変わってきてしまいます。
卵巣と卵管は正しい位置にないと、受精や着床につながりにくくなります。
また、外圧を受け形が変わってしまった子宮も100%の力で働くことができず、本来持っているはずの妊娠力も低下してしまいます。
体に必要な栄養は血管を通して運ばれますが、骨盤の傾きによってお腹への血行が悪くなり、子宮への栄養も運ばれにくくなります。
子宮の栄養不足は、子宮や卵巣の機能低下の原因になり、受精しやすい卵子が育ちにくくなったり、着床に十分な子宮内膜が育ちにくくなってしまうのです。
オステオパシーでの治療方法
傾いてしまった骨盤をオステオパシーではどう施術していくのでしょうか?
普通はもちろん「骨盤」から!と多くの方が思われるでしょう。
でも実は違うんです。
なぜなら骨盤だけ元に戻しても、本当の原因(Bさんの場合は足)を解消しない限り、またすぐ骨盤は傾いてしまいます。
Bさんの場合、根本的原因である腓骨(ひこつ)のズレを正常な位置に戻して、大腿骨や股関節のズレ、最後に骨盤の傾きを戻していきます。
こういった過去の捻挫のように、例え小さなケガでも私たちの今の体に大きく影響を及ぼしています。
もちろん捻挫だけではなく、打撲や骨折、アキレス腱断裂、交通事故の後遺症、むちうち症など過去のケガが不妊症に結びつくこと症例はたくさんあります。
これらは不妊症専門クリニックでは検査されません。そしてご本人も忘れてしまうような昔の小さな怪我では、原因として思い当たることはまずないでしょう。しかし、体は必ず記憶しています。その体の記憶を正確に読み取り、不調を突き止め、治療を行うのがオステオパシーです。
その後、Bさんは2ヵ月程 当院にて腓骨・骨盤の歪みを正す治療を行った直後の体外受精で無事妊娠されました。妊娠中も安産に向け定期的にオステオパシー施術を受けていらっしゃいます。
次のページは「原因不明の不妊症」について最後のブログ。
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